「もう休業要請に従う気はない」パチンコ店幹部が断言する訳

 去年までの予定なら、東京五輪は7月24日に開会式を迎えるはずで、そのために祝日も制定された。新型コロナウイルスの世界的流行によって東京五輪そのものが延期となり開会式は開かれないが、祝日はそのまま施行され7月に新しい大型連休が誕生した。

その連休に合わせたかのようにGoToトラベルキャンペーンが始まったが、新規感染者数が増加しているため、改めて営業自粛要請をするべきではないかとの声も上がっている。俳人で著作家の日野百草氏が、今回は、緊急事態宣言を受けて5月までは営業を自粛していた47歳のパチンコ店幹部に、これからの営業について聞いた。

「もし休業再要請が出ても、従う気ありませんね」

関東近郊、地場のパチンコ店幹部である西口真二さん(仮名・47歳)はようやく活気を取り戻した柏の駅ビルの地下、通称「マル地下」のゲーセン街を見やりながら、私の質問を遮るように言い切った。質問は緊急事態の再宣言について。連日の雨、行きつけのそば屋でしばし話を聞く。

「あくまで個人的意見ですけど、休業再要請には従いません。私だけの本音じゃないでしょう」

西口さんは私の高校時代の旧友である(高校は別)。当時はパソコンゲームマニアで、この千葉県柏にある地下のゲーセン街でたむろっていた。もう30年前の話。「イースは文学」が口癖だった彼も私も年をとった。『サーク』、『ダイナソア』、『ラストハルマゲドン』―― いまは”レトロ”の前置きがつくのか。イケてなかった私たち団塊ジュニアのオタクにとって、もはや記憶の彼方のゲームシーンだ。

「だってそうでしょう、私たちはゴールデンウィークの段階で99%が要請に従いました。99%ですよ、日本中で1万店のホールの99%、こんな業界ありますかね、それくらい私たちは休業要請を守ったんです」

西口さんの言う数字はおおよそのものだろう。私の手元にある実際の数字では2020年4月の段階でホール数は1万店を割っている。また休業要請に従ったのは全国で98.7%となっているが、会話上ありがちな誤差の範囲であり言葉の本質は変わらない。パチンコ業界が一丸となって国や自治体の要請に従ったことは事実である。日本の自動車産業主要10社国内単体の雇用数をも上回る、22万人のパチンコ産業に従事する労働者とともに。

「みんな、その間のことはもう知らんぷりですかね。パチンコ業界がコロナを撒き散らす、パチンカスは不謹慎だと叩いたこと。確かにごくわずかに営業を強行したホールもありましたよ、でもあんなの例外中の例外、私も含めて国や自治体の要請に従ったんです。身銭切って休んでたのにね」

自粛期間中のパチンコ店がそれ以外の外食や小売と違うのは、店を開けていればそれなりに稼げたことだろう。客が来なければ休業するしかないし、実際それで臨時休業を決め込んだ飲食もあったが、パチンコ店は開けていれば儲かった、それでもパチンコ業界は国や自治体の命令に従って自主休業したことになる。それなのに、まるでコロナの元凶のように日本中から叩かれてしまった。

「普段のおこないが悪いから、イメージが悪いからとか散々でしたね。いまその役目は夜の街ですかね。ホストクラブもあれだけクラスターが出れば対策は必要でしょうね。でもパチンコ店からクラスターは発生していない」

そう、クラスターは発生しなかった。いまに至るまで、日本中から袋叩きに遭って当然といった行為をパチンコ産業はしていない。そもそも劇場であれ、居酒屋であれ、夜の街であれ、コロナが発生したからと十把一絡に叩いていいわけでもあるまい。

「あそこがそうだからどうとか言いたくありませんけど、百貨店とか発生しても叩かれない。世間のお気持ち次第ですね」

苦笑する西口さんだが、かなり腹に据えかねていることが私にはわかる。西口さん、いや西口はあのころもそうだったがすぐに言葉を荒らげる。普段は物静かで冷静なだけに瞭然だ。ブレスレット状にコマを余らせた雲上時計をじゃらりと回す。

「でもね、それは個人的に構わないと思ってます。私たちは来てくれるお客さんだけを相手にしていればいいんですから。以前ほどの客入りじゃありませんが解除後の売り上げはまずまず、すぐ店がどうなるものでもない。むしろ新台のほうが頭痛い」

「とにかく休業再要請には従いませんよ。それは私たちパチンコ業界だけじゃない、今回は民間企業すべての総意でしょう」

あくまで西口さんの意見であり、総意かどうかはわからないが、私もうなずかざるを得ない部分はある。みなコロナで死ぬより経済で死ぬほうが怖いのだ。

ただ西口さんの従わないという強い決意は営業面だけの問題ではないように思う。曖昧なままにコロナ禍の主犯のようにあげつらわれ、生贄となったあの緊急事態宣言下、クラスターも発生させることなく耐えたパチンコ業界、みなそんなことなど無かったかのようにパチ屋を無視して、ホストクラブだ、小劇場だ、ニューハーフショーパブだと面白おかしい魔女狩りにご執心だ。アルベール・カミュの『ペスト』の民衆さながら日本国民は不機嫌で、新たなバッシングの矛先を喜々として探している。まさか日本人が日本人を差別するディストピア、「たかがパチンコ」に始まったコロナ差別の対象が、いまや都民1300万人に対する差別に至るとは思わなかったが ――― 。

引用:https://news.yahoo.co.jp/articles/93f7d5da6e81e16bf130586d2d81924e0aba9bc9?page=6

ステイサム
東京の新規感染者が増えてきて、今後もその姿勢を貫けるか。頑張ってほしいですね。





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