コロナ禍で激変したパチンコ業界。意欲的な店と客にはピンチではなくチャンス?

◆健康増進法、コロナで激変したパチンコ業界

パチンコ業界を巡る環境が激変した。
ギャンブル等依存症対策の煽りや改正健康増進法(受動喫煙の防止)の影響を受け、パチンコホールの経営はそもそも苦境に立たされていたが、泣きっ面に蜂のコロナ禍により、今年1月~5月のパチンコホール企業の累計倒産件数は12社で昨年の2倍を記録した。長期に渡る営業自粛や執拗なパチンコバッシングにより客足は遠のき売上は激減、営業が再開した今でも、来店客数はコロナ禍以前の50%~60%に落ち込んでいる。

「コロナの影響は当分続くでしょう。8月のお盆シーズン頃には多少戻るでしょうが、お客さんの数がコロナ前の元通りになることは、当分は無いと考えています」とは都内某店のパチンコ店店長の言葉。

しかしこの状況を、チャンスと捉えるパチンコ店もある。コロナ禍によって想定外の新たな集客要素が誕生したからである。キーワードは「安心」と「貯玉」。

パチンコ店の「ウィズコロナ」時代の集客戦略を検証する。

◆「立地」と「出玉」からの脱却

本来、パチンコ店の集客のキモは「立地」と「出玉」である。

客の立場で考えるのであれば、自宅や職場の近くにあるパチンコ店に気軽に立ち寄る場合が多く、駅前立地のパチンコ店等はその代表格でもある。立地さえよければある程度の集客は見込めるというのは、パチンコ店に限らずマーケティングの基本であり、これ以上の説明は不要であろう。

もう一つは「出玉」。「パチンコやパチスロで勝ちたい」と考える客は、多少遠かろうとわざわざ還元率の高そうな店を目指す。パチンコ店もあらゆる媒体による広告宣伝を駆使し「出玉」をアピールする。

勿論これ以外にも、設備の豪華さや設置機種の構成、漫画や雑誌コーナーを充実させる等のその他サービスも集客の要素となるが、これらはプラスアルファの感が強い。

しかしコロナ禍は、この「立地」と「出玉」の他に、「安心」という新たな集客要素を生み出した。パチンコ店におけるコロナ感染の危険度は報道されたほど高いものでは無いというのは既に明白であるが、メディアの影響を多く受けた客にすれば、パチンコ店は「やはり怖い場所」と感じている。その様な客に対し、「当店は感染防止対策を徹底しています」というアピールは、集客の重要な要素となる。

実際にパチンコ店側も、メディアが拡散した負のイメージの払拭に向け店内消毒や飛沫感染防止ボードの設置、マスク着用の徹底、密にならない行列管理、従業員の健康対策等様々な対策を講じており、安心安全な遊技環境の醸成はウィズコロナ時代の必達目標になっている。

特に高齢者層にとっては、このような安心な遊技環境がパチンコ店を選ぶ重要なポイントになっている。

◆コロナ禍で起きた「貯玉」の全額引き出し

コロナ禍が生み出した新たな集客要素のもう一つが「貯玉」である。

まずパチンコ店における「貯玉」の意味が分からない方のために簡潔に説明するのであれば、パチンコ店はお店ごとに会員カードを用意しており、自身の出玉を会員カードに、貯金ならぬ「貯玉」をしておくことが出来る。

客にとっての「貯玉」のメリットはいくつかあるが、一番は出玉を都度、賞品に交換する必要がなく、翌日以降の遊技時に現金投資をすることなく遊技が出来るということだろう。より突っ込んだ言い方をすれば、投資額と賞品額(価値)の差分を帳消しに出来るということ。逆に店側のメリットは、貯玉を持っている客は再来店の可能性が高いため、顧客の囲い込みが出来るというところか。

しかしこのコロナ禍、パチンコ店が営業自粛を始めるという噂が出回ったタイミングで、全国のパチンコ店では多くの客が自身の貯玉を全額引き出してしまうという現象が起こった。長期の休業によりそのまま閉店してしまったら、貯玉がフイになってしまうと思った行動である。(実際には仮に閉店しても多くの場合100万円相当のカタログ賞品への交換は可能であるが)

しかしこれがパチンコ店には新たな集客のチャンスにもなっている。

◆「囲い込み」の枠が外れたことによる再編

今まではそれぞれのパチンコ店が会員カードによる囲い込みを行っていたが、その「囲い」が外れた現状で、客はフラットな視点で店の選択を出来る。

会員カードに多くの貯玉をしていた客というのは、言い換えれば再来店頻度が高いコアな客層に該当する。この客層を新たに囲い込めれば、競合市場内での客の流動が生まれ、地域内でのパチンコ店の「序列」の変化すら引き起こす。

「組合からは広告宣伝を控えるよう通達が来ている。露骨な広告宣伝をせず、いかに新規顧客を開拓するのかは難題。でもコアな客層は自分たちの情報網を持っており、優良店という噂は広がりやすい。売上や粗利が激減しているが、それでも無理に回収はせず客にとって割の良い営業をしろと上司からも言われている」(前出の店長)

コロナ禍がパチンコ業界に与えたダメージは計り知れない。
だからこそ、今取り組むべきはコロナ以前とコロナ後の変化を敏感に感じ取り、そこから生まれた小さなチャンスに果敢にアタックしていくこと。

パチンコ業界に限らず、すべてのビジネスが今はそうだ。

<文/安達夕>

【安達夕】
Twitter:@yuu_adachi
引用:https://hbol.jp/220968

ステイサム
自粛期間中に次の局面についてどれくらい準備してたか試されるな

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